2015年4月9日付け産経新聞記事(共同通信配信)に、一般社団法人つくろい東京ファンドの個室シェルター「つくろいハウス」に関する記事が掲載されました。

生活困窮者向け宿泊施設「個室化」進む
次のステップへ「安心」提供

住まいを失った生活困窮者向け宿泊施設の「個室化」を進める動きが都内でも広がっている。地価が高い23区内などでは相部屋形式が多く、心の病などで施設になじめない人が路上生活に戻ってしまうこともある。支援関係者は「困窮者が次のステップに進めるよう、安心して過ごせる場所を提供したい」と話している。

150409産経記事

中野区の鉄筋コンクリート3階建てビルに入る「つくろいハウス」。3階部分の6畳と4畳半の8部屋を、1~6カ月程度宿泊できるシェルターとして使っている。昨年7月の開設以降、今年3月末までに計23人を受け入れてきた。

「着の身着のままでここに来た」と、昨年秋から暮らす小林勇さん(84)。介護保険の要支援2の認定を受け、週に1回ヘルパーに洗濯や掃除を手伝ってもらっている。「この年になると借りられるアパートを探すのは難しい。本当にありがたい」と話す。

シェルターは短期の滞在が基本。新たな住居に移れるまで、スタッフが生活保護の申請を手伝うなどサポートする。家賃は入居者の経済状態によって設定しており、月に数万円が目安だ。負担ゼロの場合もある。

ハウスを運営するのは、ホームレス支援を続けてきた稲葉剛さん(45)らがつくる「つくろい東京ファンド」。自己資金に加え、インターネットを通じて小口の出資を募るクラウドファンディングなどを活用し、運営の初期費用約200万円を集めた。

部屋はビルのオーナーが「暮らしに困っている人のために使ってほしい」と安く貸してくれた。生活困窮者が宿泊できる施設は目的によってさまざまなだ。シェルターは緊急一時宿泊事業として、自治体がNPO法人などに委託して運営しているケースが多い。
入居者の相談に応じて就労を図る「自立支援センター」という形態もある。民間事業者による「無料・低額宿泊所」は23区内など都市部を中心に増えているが、一部に悪質な「貧困ビジネス」が疑われるケースも指摘される。

つくろいハウスに入居する別の男性(42)は、公園やネットカフェでの寝泊まりを繰り返してきたという。
「公園ではアルミの防寒シートで体をぐるぐる巻いて寝ていた。落ち着いたところで寝られると疲れがとれる」

これで意欲が湧き、ホームレスが街頭で立ち売りする雑誌「ビッグイシュー日本版」の販売員として働き始めて貯金をし、3月中旬からは自分でアパートを借りた。

ホームレス支援に取り組むNPO法人「抱樸(ほうぼく)」では、「居住環境が整うことで、今後の生活がイメージできる。頑張ろうという意欲が出て、自立につながる」と、施設個室化が全国的に広がることを期待している。