2016年3月24日付けの中日新聞の特集「新貧乏物語 第2部・老いて追われる」に、稲葉のインタビューに基づく記事が掲載されました。

4月2日付け東京新聞にも同じ記事が掲載されました。

なお、この記事はインタビューに基づいて記者がまとめた文章で構成されています。内容の事前チェックは行なっていないため、稲葉が通常は使っていない言い回し(「中流から転落」)が含まれています。ご了承ください。

http://www.chunichi.co.jp/article/feature/binboustory/list/CK2016032402000254.html
新貧乏物語 第2部・老いて追われる <特集>終のすみか求め
若い世代にも迫る危機 年金や格差、根の深い問題
自立生活サポートセンター・もやい 稲葉剛理事(46)

住まいを追われて困窮する高齢者には、どんな支援が必要なのか。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)の稲葉剛理事は、低年金や無年金に直面する恐れがある若い世代にとっても差し迫った課題であると指摘。その上で、「社会全体で考えていくべき問題だ」と強調する。

高齢者の生活保護受給者は増え続け、すべての受給者のほぼ半数に達します。アベノミクスで景気は良くなっていると言われていますが、格差は広がるばかりです。

そんな中、問題は経済的な貧困だけではなく、住まいの貧困にまで広がっています。高齢者の民間アパートへの入居は難しく、介護が必要な場合、特別養護老人ホームなどの公的施設も不足している。この現状をいち早く改善しなければいけません。

現在、もやいでは約九百世帯の困窮者の生活をサポートしていますが、六十五歳以上の高齢者が半分を超えています。さらに、その九割強が単身世帯。事業に失敗した自営業者が目立ちますが、介護離職や病気によって中流から転落した人もいます。

特に首都圏では東日本大震災後、住宅の耐震性の重要さが見直され、数が少ない公営住宅の代わりに低所得者の受け皿になってきた木造アパートの建て替えが急速に進んでいます。家賃が跳ね上がって倍近くになり、強制的に追い出される例も少なくありません。居場所をなくした高齢者が、貧困ビジネスの犠牲になることもあります。

高齢者の苦しみは、実は若い世代にも迫っています。年齢が下がれば下がるほど非正規雇用が拡大しており、現在の年金制度上では、将来的に低年金や無年金になる可能性が非常に高い。だから、今は心配ないと思っている若い人たちにとっても、決して人ごとではない。世代に関係なく、社会全体で考えていくべき問題です。

(西田直晃)

<いなば・つよし>1969(昭和44)年、広島市生まれ。東京大教養学部卒。2001年、もやいを設立し、ホームレスや生活困窮者の保証人を引き受け、民間アパートへの入居を支援している。立教大院特任准教授(居住福祉論)。著書に「生活保護から考える」など。