つくろい東京ファンドでは、生活保護の利用にあたって最大の心理的なハードルになってきた「扶養照会」の運用改善を求めてきました。

「扶養照会」とは、福祉事務所が生活保護を申請した人の親族に「援助が可能かどうか」と問い合わせることです。照会は通常、二親等以内の親族(親・子・きょうだい・祖父母・孫)に対して、援助の可否を問う手紙を郵送することで実施され、過去におじ・おばから援助を受けていた等、特別な事情がある場合は三親等の親族に問い合わせが行くこともあります。問い合わせの結果、親族が生活保護基準を上回る金額を援助するということになれば、民法に基づく扶養が生活保護に優先されることになります。

つくろい東京ファンドが2020年の年末から2021年の年始にかけて実施したアンケート調査では、この「扶養照会」が生活保護利用の最大の阻害要因となっていることが明らかになりました。

そこで私たちは厚生労働大臣に対して、「本人の承諾なしで家族に連絡しない」という運用に改善するよう、扶養照会の抜本的見直しを求めるネット署名を開始しました。ネット署名は大きな反響を呼び、短期間に約5万8千人の賛同を得ることができました。

また、生活保護問題対策全国会議とともに扶養照会の抜本的見直しを求める要望書を厚生労働省に二度にわたって提出しました。

こうした声に押され、厚生労働省は2段階に分けて、扶養照会の運用を改善しました。

1回目は、厚生労働省が2021年2月26日に出した通知です。
この通知では、DVや虐待のある場合は親族に連絡をしないということが明確になり、「一定期間(たとえば十年程度)、音信不通が続いている」、「親族から借金を重ねている」、「相続をめぐり対立している」等の事情がある場合も扶養照会を行わなくてよいということになりました。

【第1段階の運用改善に関する厚生労働省資料】

■令和3年2月26日「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について」

■令和3年2月26日「『生活保護問答集について』の一部改正について」

■令和3年2月26日「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」

さらに、2021年3月30日には第2段階の運用改善がありました。福祉事務所職員の実務マニュアルである「生活保護手帳別冊問答集」の内容を一部改訂するという通知が新たに出されたのです。

そこには、生活保護の申請者が扶養照会を拒んだ場合、その理由について「特に丁寧に聞き取りを行い」、照会をしなくてもよい場合にあたるかどうかを検討するという対応方針が新たに示されました。また、扶養照会を実施するのは「扶養義務の履行が期待できる」と判断される者に限る、という点も明確になりました。

【第2段階の運用改善に関する厚生労働省資料】

■令和3年3月30日「『生活保護問答集について』の一部改正について」 


■令和3年3月30日「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について」 

これにより、親族に問い合わせが行くことを拒否したい人は、申請時に「拒否したい」という意思を示し、一人ひとりの親族について「扶養照会をすることが適切ではない」または「扶養が期待できる状態にない」ことを説明すれば、実質的に照会を止められることになりました。

この運用の変更は、完全とはいえませんが、私たちが求める「本人の自己決定権の尊重」に一歩近づいた修正だと言えます。

それでも扶養照会をしようとする福祉事務所職員はいるでしょう。

そこで、つくろい東京ファンドは生活保護問題対策全国会議とともに、扶養照会を回避するためのツールを作成しました。

以下に「扶養照会に関する申出書」と「申出書添付シート」のPDFをアップします。

これらをダウンロード&プリントアウトの上、しっかり記入して、申請時に職員に渡してください。念のため、提出前にコピーをとっておくことをお勧めします。

<扶養照会に関する申出書>


<扶養照会に関する申出書添付シート>

「申出書」と「添付シート」の記入方法は、下記の記入例(画像)をご覧ください。

「申出書」と「添付シート」を提出したにもかかわらず、希望が聞き入れられなかったという方は、すぐに、つくろい東京ファンドのお問い合わせフォームまでご相談ください。

また、生活保護を利用している人の親族からも「毎年、役所から扶養照会の文書が郵送されてくるのがつらい」という声を聴いています。そういう方のために、生活保護問題対策全国会議にお願いして、親族側から扶養照会を止めるために活用できる申出書も作成してもらいました。

親族側版の「申出書」は下記でダウンロードできます。今後、福祉事務所からの文書送付をやめてもらいたい、という方は、こちらの申出書をご記入の上、文書を送ってくる福祉事務所に郵送してください。

<扶養照会に関する申出書(親族側版)>

今後とも、私たちは「扶養照会」という前近代的な仕組みを完全に撤廃できるように働きかけをしていくつもりですが、当面の間、これらのツールを活用して、実質的に親族への照会がおこなわれることを止めていきたいと考えています。

ぜひこれらのツールをそれぞれのお立場でご活用いただければと思います。また、このページのシェアにもご協力をお願いいたします。

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