記録的な物価高騰が続いているにもかかわらず、来年度からの生活保護基準を下げようという動きが政府内で起こっています。
財務省は、11月13日に開催した財政制度分科会において、一般低所得世帯(所得の下位10%)の消費水準の伸びが小さいことを理由に基準の引き下げを示唆する資料を提出しました。
資料は「一般低所得者世帯の消費水準(生活扶助相当支出の伸び)」が+1.6%と低い伸び率にとどまっていることを強調した上で、「物価上昇に対しては、その影響を緩和する対策が機動的かつ重層的に講じられている」と述べています。
しかし、政府の物価高騰対策が効果的であれば、一般低所得者世帯の消費が伸び悩むことはなかったはずです。
一般低所得者世帯の消費が低迷しているのは、物価高騰に対して政府が有効な対策を行わず、米などの食料品価格が高騰し続けているため、家計が破綻しないよう食べるものを節約せざるを得ない人が増えているからです。
家計の消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」は上昇傾向にあり、今年7~9月期は29.3%と約40年ぶりの高水準を記録しました。
財務省の主張は低所得者の生活実態を無視した議論だと言わざるをえません。
報道によると、引き下げを強行しようとする財務省に対しては、厚生労働省からも異論の声が出ているようです。
続く物価高でどうなる生活保護見直し 厚労省と財務省の攻防 -毎日新聞
そもそも私たちは、生活保護の基準を一般低所得者世帯の消費水準との比較によって検証する手法自体を批判してきました。
日本の生活保護の捕捉率は2~3割(推計)と低いため、下位10%の低所得者層には生活保護基準以下の水準での生活を強いられている世帯が多数含まれてます。そのため、一般低所得世帯の消費水準と生活保護基準を比較検証すれば、「基準の方が相対的に高い」という結果が出るのは、ある意味、当然のことだと言えます。
捕捉率が低いという状況が変わらない限り、一般低所得者世帯の消費水準との比較という手法は「自動引き下げ装置」と化してしまいます。
11月12日に全国32団体の連名で提出した要望書において、私たちは「生活保護利用世帯の実質的購買力を維持するため、2025年度の生活扶助基準額を単身世帯は13%、複数世帯は12.6%以上引き上げること」と「所得下位10%層の消費水準を基礎とした2022年の生活保護基準部会による検証は白紙撤回をすること」を求めました。
生活保護の基準は就学援助や国民健康保険・介護保険の減免基準など47の低所得者支援制度に連動しています。
生活保護基準が下がると、生活保護のみならず、さまざまな制度が利用しづらくなり、国の貧困対策全体が後退することになります。
ぜひ多くの方のご注目をお願いいたします。
12月4日(水)には「下げるな!上げろ!生活保護基準」と題した緊急院内集会が開催されます。
院内集会では、つくろい東京ファンドの稲葉が作家の雨宮処凛さんとともに司会を務める予定です。
下げるな!上げろ!生活保護基準
■日時 12月4日(水)12:00~14:30
■会場 参議院議員会館 講堂(オンライン併用)
ご都合のつく方はぜひご参加ください。