桐生市第三者委員会は今年度末終了へ。調査団は延長を要望
群馬県桐生市の生活保護行政における数々の違法・不適切対応を検証してきた第三者委員会の審議が今年度末で終わろうとしています。
3月14日(金)10時~に開催される第三者委員会の第8回会合では、報告書のとりまとめに向けた議論が行われる予定です。
桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会 第8回会議
https://www.city.kiryu.lg.jp/shisei/jinji/1023559/1023560/index.html
桐生市生活保護違法事件全国調査団では、市が「水際作戦」の存在を未だに認めていないことに象徴されるように検証に非協力的な姿勢を貫いているため、第三者委員会による検証も全容解明にはほど遠い状態にあると考えています。
そこで調査団は2月10日、年度を越えて委員会を継続し、徹底した検証を進めることを求める要請書を提出。19日には市福祉課長らと面談して、申入れをおこないました。
第三者委員会の期限の延期と徹底した検証を求める要請書(2月10日)
https://tsukuroi.tokyo/2025/02/10/2613/
桐生市の生活保護費不適切支給問題で市民グループが要請書 -NHK群馬
https://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/20250219/1060019045.ht
しかし、後日、市と第三者委員会からは年度内に第三者委員会が報告をまとめる見込みとの回答がありました。
調査団は14日、記者会見を開催。新たに発覚した問題についての申入れも
3月14日(金)午前に開催される第三者委員会の第8回会合をもって、第三者委員会はクロージングに向かうと思われます。
このままでは問題の全体像や責任の所在が曖昧なままになってしまう可能性があるため、調査団では、同日(14日)の午後に、報告書のとりまとめ案とこれまでの検証に関する見解を発表する記者会見を開催することにいたしました(会場は第三者委員会が開催されるのと同じ会館内の会議室)
メディア関係者の方のご参加をお願いいたします。
桐生市生活保護違法事件全国調査団・記者会見
◆日時:3月14日(金)13時~
※午前中の第三者委員会が長引いた場合、開始時間を後ろにずらすこともありえます。
◆場所:美喜仁桐生文化会館 第二会議研修室
アクセス
http://www.kiryu-piif.jp/access/index.html
記者会見では各調査団メンバーより、報告書のとりまとめ案やこれまでの審議状況の評価をお話します。
また、2月19日の桐生市福祉課などとの懇談の場で、居住不動産の問題など新たな問題が発覚したことを踏まえ、3月7日、調査団は市に対して、下記の新たな申し入れをおこないました。
14日の記者会見では、この点についても説明します。
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2025年3月7日
桐生市 荒木 恵司 市長
桐生市の生活保護運用の抜本的改善を求める申し入れ
桐生市生活保護違法事件全国調査団
団長 井上 英夫
日頃から桐生市民についての行政の充実に尽力されていることに敬意を表します。
さて、2月19日に貴市の管理職を含む職員の皆さまと私ども調査団とが懇談を行いました。その際に、生活保護の適切な運用についての疑問を抱かせる内容がありました。その中から、以下の3点を指摘し、強く改善を求めます。
記
1 生活保護利用者の居住不動産の保有容認について改善すること
懇談の場で福祉課長から「保有を容認できるのは500万円以下」との驚くべき発言がありました。それを受け、保護係長から「リバースモーゲージのこともあるので500万円と述べた」旨の弁明もありました。
全国調査団が把握している実例では、100万円程度の処分価値しかない居住不動産を売却させた事案、借地上の居住不動産があると保護を利用できないとの説明を受けたという事案があります。
生活保護の実施要領では、居住不動産は原則として保有容認となっています。ただし、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合には保有を認めないとされています。具体的には、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるかどうかの判断の目安として計算式を示しています(計算すると、最低でも2000万円程度までは保有容認となります)。
そして、その目安だけでは判断が困難な場合にケース診断会議等で総合的に判断することとしています。そのうえで、ケース診断会議では、不動産の処分の可能性や、健康状態、自立の可能性などを検討するものとしています。これはあくまでも保有容認の目安だけだと判断に迷う場合の対応を示したものであり、100万円の不動産を売却すべき等としたものではありません。実施要領を正確に理解し、制度運用を改善すべきです。
2 医療移送費(通院交通費)が支給できることを保護利用世帯に周知すること
医療移送費の支給実績が著しく少ないのは、生活保護利用者への周知が足りていないことが大きいと思われます。厚生労働省は、医療移送費について利用者に支給できることを説明することを求めています。
これまでに調査団が把握している当事者の声として「医療移送費は桐生市では支給していない」と担当職員から説明されたとの実例もあります。
懇談の場で「医療移送費を支給できることは新規の利用者に伝えている」との説明がありました。しかし、情報開示された医療移送費の実績を見ても、2月19日現在の今年度の支給実績は、72,710円(38件)しかありません。これは、2022年度の2,400円(8件)に比べて改善されているとはいえ、まだ十分ではありません。通院交通費の申請のための申請書を保護利用の全世帯に示すなど、周知をすべきです。
3 プライバシーを守れない新庁舎のオープンカウンターの改善をすること
新庁舎の相談カウンターが、周囲や階上から丸見えになっています。誰に見られるかも分からない窓口で相談をすることは心理的なハードルとなり、申請権の侵害になりかねません。
「別室の相談室に移動するかどうかを確認している」とのことですが、生活保護の相談や新規申請などは、丸見えでない、プライバシーを守ることができる相談室で行うよう改善してください。
以上
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小林美穂子・小松田健一 著『桐生市事件』、3月末刊行
3月28日には、桐生市問題を追及してきたつくろい東京ファンドスタッフの小林美穂子と東京新聞の小松田健一さん(前・前橋支局長)の共著『桐生市事件』が地平社より刊行されます。
【3月28日刊行】『桐生市事件――生活保護が歪められた街で』
著:小林美穂子、小松田健一
https://chiheisha.co.jp/2025/03/09/978-4-911256-16-9/
保護費を毎日1000円だけ手渡し、残りは金庫にしまうなど、信じがたい運用が発覚した桐生市の生活保護行政。助けを求める市民を威圧し、支給を徹底的に削る姿勢が、次第に明らかになっていく。支援と取材の現場から迫ったルポルタージュ。
各オンライン書店などでも予約受付が始まっています。ぜひご予約ください。
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桐生市の生活保護行政に関わる問題は多岐にわたっており、様々な方面からの追及が続いています。引き続き、ご注目をお願いいたします。
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