桐生市の生活保護行政における数々の違法・不適切対応を検証してきた第三者委員会(委員長・吉野晶弁護士)が報告書をとりまとめ、3月28日、荒木恵司市長に提出しました。
報告書は、「1日1000円」等、市が生活保護費を細切れに支給し、月内に満額を渡さない対応を生活保護法違反と認定。満額を支給していないにもかかわらず、支給していたと記録していたり、印鑑を無断押印していたのは「組織的不正」であり、「規範意識が崩壊」していると糾弾しました。
桐生市の生活保護問題 「組織的な不正」と指摘 第三者委が報告書提出 -桐生タイムス
https://kiryutimes.jp/article/HzL8YUaH/
桐生市生活保護問題のこれまでの動きについては、下記の記事がまとまっているので、ご参考にしてください。
桐生市生活保護巡る「水際作戦」、真相は 28日に第三者委が報告書 | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20250326/k00/00m/040/227000c
群馬・桐生市の生活保護費不適切対応 問題点を時系列で振り返る | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20250327/k00/00m/040/213000c
「生活保護バッシング」「水際作戦」としかいいようのない手口が明らかに 桐生市生活保護めぐる第三者委員会|生活ニュースコモンズ
https://s-newscommons.com/article/7685
市と第三者委員会による記者会見では、荒木市長がコメントを読み上げました。
焦点になっていた利用者半減の理由について、市長は「申請権の侵害が生じていたことが大きな要因であった」と認め、制度利用者や相談者に「耐え難い苦痛や不利益を与えてしまったこと、また、桐生市民の誇りを著しく傷つけてしまったことに対しまして、心よりお詫び申し上げます」と謝罪しました。
荒木市長の謝罪コメント
https://www.city.kiryu.lg.jp/shisei/jinji/1023559/1023560/index.html
問題発覚から16ヶ月。頑なに水際作戦の存在を認めてこなかった桐生市ですが、勇気を出して自身が受けた被害を語った当事者や、目撃した情報を証言した市民や福祉・医療関係者、市役所職員らの声に押され、ようやく長年にわたって人権侵害をおこなってきたことを認めました。

しかし、10年で半減させた手口の全てが解明されたわけではありません。
桐生市生活保護違法事件全国調査団は、市と第三者委員会の会見終了直後、市内の会議室で記者会見を開催。第三者委員会の報告書に関して、各メンバーがコメントをおこないました。
つくろい東京ファンドの稲葉は、この1年間の調査団活動から見えてきた「半減の手口」をイラストを使って解説。調査団が指摘してきた25のポイントが報告書の中で言及、分析されているのかを示す「チェックリスト」も示して、扶養届の偽造(架空の収入認定による却下・減額)や民間金銭管理団体による徹底した管理、印鑑の不正使用の全容、警察官OBが果たしていた役割など、未解明の課題が多々残っていると指摘しました。

チェックリストにはそれぞれのポイントの該当ページも示してあるので、報告書を読まれる方はご参考にしてください。

第三者委員会報告書PDF
https://www.city.kiryu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/023/560/houkokusyo.pdf
全国調査団の記者会見にオンラインで参加した吉永純さんは、報告書の中で認定された違法行為は「氷山の一角」に過ぎないと指摘。
尾藤廣喜弁護士は、これまで制度を利用できなかった人たちへの補償の必要性を話されていました。
井上英夫団長は「あくまで報告書は出発点」と話し、問題の背景にある人権意識の低さにメスを入れるべきと締めくくりました。
第三者委員会の報告書によって、事態が大きく動いたことは評価しつつ、残された課題の解決に向けて、現地の方々との連携を続けていきます。
3月28日には全国調査団メンバーで、つくろい東京ファンドスタッフの小林美穂子と東京新聞の元・前橋支局長の小松田健一さんの共著『桐生市事件―生活保護が歪められた街で』が地平社より刊行されました。
ぜひ手に取っていただければと思います。下の画像をクリックすると「版元ドットコム」のページに移ります。

4月15日(火)には桐生市事件をテーマにした配信イベントを開催いたします(詳細は後日、お知らせいたします)。引き続き、桐生市事件へのご注目をよろしくお願いいたします。
