2013年から強行された過去最大の生活保護基準引下げの違法性を問う「いのちのとりで裁判」が大詰めを迎えています。
5月27日には、大阪訴訟と愛知訴訟について最高裁で初の口頭弁論が行われ、今夏には最高裁の統一的な判断が示される見込みです。
5月27日、ついに最高裁で弁論が行われます!大阪訴訟・愛知訴訟の上告受理決定と弁論期日指定を受けて声明を発表しました(いのちのとりで裁判全国アクション)
裁判のクライマックスに向けて、4月3日には参議院議員会館講堂にて大集会が開催され、会場210名、オンライン380名、合計590名が参加。つくろい東京ファンドの稲葉剛による講演も行われました。
いのちのとりで裁判4.3決起大集会、590名の参加で大成功!!(いのちのとりで裁判全国アクション)
生活保護基準のあり方に社会の注目が集まる中、2012年のような生活保護バッシングが繰り返される可能性が懸念されています。
いのちのとりで裁判全国アクションやつくろい東京ファンドなど全国の60団体は5月16日、生活保護バッシングへの注意を呼び掛ける共同声明を発出しました。
ぜひご一読いただき、バッシングを許さないという声を広げていただけるとありがたいです。
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2025年5月16日
生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と議論を求める共同声明
~「生活保護バッシング」注意報を発出します~
今年3~4月、講談社が運営するウェブマガジン「FORZA STYLE」において、生活保護バッシングや外国人ヘイトを煽る記事が次々と掲載されるという問題が起こりました。
特に4月8日と9日にアップされた下記の2つの記事は、Yahoo!ニュース等にも転載され、一時期、Yahoo!ニュースのコメント欄が生活保護利用者や外国人に対する差別的なコメントで埋め尽くされるという状況が発生しました。
「働くのダルいし生活保護」労働なしで生きる権利を求める人々。関係者が語る「真面目に働いている人がバカをみる国」ニッポン【専門家解説】
「誰が申請を?」来日間もない外国人の生活保護に疑問を抱く貧困母子家庭。逆転する「貧困」と「生活保護」の暮らしぶりに今思うこと【識者解説】
この2本の記事は、いずれも「関係者」の話を聞いた「専門家」「識者」による解説をライターがまとめたという体裁になっていましたが、情報源となっている「関係者」とは「義姉が元ケースワーカーだったと話す女性」や「外国人受給者がアパートのお隣さんだと話す女性」でしかなく、問題を解説する「専門家」「識者」とは思えない「危機管理コンサルタント」でした。裏取りもしていない噂話レベルの情報をもとに特定のグループの人たちへのマイナスイメージを植え付けるという手法は、ヘイトスピーチでよく見られる悪質な印象操作です。
講談社という大手出版社が運営するサイトにおいて、生活保護利用者や外国人への差別を扇動する記事が掲載されたことの衝撃は大きく、多くの人が批判の声をあげました。Yahoo!ニュースは4月11日までに上記の2つの記事を削除し、講談社「FORZA STYLE」も12日までに上記を含む生活保護関連の記事を全て削除しました。両社とも削除の理由は明らかにしていませんが、批判を踏まえた対応であったと推察されます。
言うまでもなく、生活保護利用者への偏見・差別を煽る報道は、生活に困窮する人々を制度から遠ざけ、制度を利用している人々の尊厳を傷つけます。
過去には、社会保障費の削減を主張する政治家が自らの政策実現のために制度利用者に対するバッシングを人為的に引き起こしたり、悪用したりする例も散見されます。
2012年には、一部の国会議員が主導する形でテレビや週刊誌で生活保護バッシングが過熱。バッシングを通して広がった生活保護の制度や利用者に対するマイナスイメージが、過去最大の生活保護基準引き下げ(2013年~2015年)という政策決定への呼び水となりました。
過去最大の生活保護基準引き下げに対しては、全国各地の生活保護利用者が原告となって減額の取り消し等を求める「いのちのとりで裁判」が提起されています。「いのちのとりで裁判」では、これまで言い渡された41の判決のうち、原告が26勝15敗(地裁19勝11敗、高裁7勝4敗)と大きく勝ち越しており、5月27日には大阪訴訟と愛知訴訟に関する最高裁の口頭弁論期日が設定されました。今夏には、最高裁の統一判断が示される見通しであり、一連の裁判はクライマックスに差し掛かっています。

今後、「いのちのとりで裁判」の最高裁決着が近づくにつれ、生活保護に関する報道やSNS発信が増加することが予想されますが、生活保護への社会的注目が高まることに便乗して、生活保護バッシングや外国人ヘイトを扇動する者が現れることが懸念されます。
また、今年6月に予定されている東京都都議会議員選挙や、7月に実施されると見られる参議院議員選挙において、選挙活動という形で生活保護バッシングや外国人の生活保護利用をめぐるヘイトが拡散されてしまう危険性もあります。
司法や政治における上記の状況から、私たちは特に今年の春から夏にかけての時期、生活保護に関連するバッシングやヘイトに注意することを呼びかけます。
全てのメディア関係者に対しては「生活保護に関する偏見や差別を助長する報道をおこなわない」という基本姿勢を明確にした上で、正確な情報に基づく冷静な報道をおこなうことを求めます。
また、プラットフォーム事業者に対しては、偏見・差別を煽る誤情報や真偽が不確かな情報の拡散を防ぐための措置を採ることを求めます。
生活保護制度をめぐる議論が、誤った情報や真偽が不確かな情報によって左右されたり、差別を煽る印象操作によって誘導されたりすることはあってはなりません。事実に基づいて冷静に議論がおこなわれる環境をつくるため、SNS利用者を含むすべての関係者にご協力をお願いいたします。
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(順不同 計60団体)
