「杉並から差別をなくす会」や「つくろい東京ファンド」など7団体は、6月の東京都・杉並区長選挙および区議会議員補欠選挙(6月21日告示、同28日投票、同29日開票)に向け、5月15日、連名で杉並区および区選挙管理委員会に対して申し入れを行いました。

この申入れについては、各メディアでも報道されました。

選挙戦のヘイト 対策を 市民団体、杉並区と区選管に要望:東京新聞デジタル

https://www.tokyo-np.co.jp/article/488486

区長選に向け、市民団体がヘイトスピーチ防止を要請 東京・杉並 | 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20260515/k00/00m/040/229000c

私たちの要請に対し、4月26日、区と区選管から回答をいただきました。

杉並区長選のヘイトスピーチ防止要請に区が回答 「周知啓発へ」 | 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20260527/k00/00m/040/199000c

選挙を口実にしたヘイトスピーチが止まらない 人権と、表現・選挙の自由との間で悩む選管…どう向き合えば:東京新聞デジタル

https://www.tokyo-np.co.jp/article/491776

以下に要請書の全文と区・選管からの回答を貼り付けます。ぜひご一読ください。

他地域での取り組みの参考にもしていただけるとありがたいです。

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杉並区⻑ 岸本 聡子 様
杉並区選挙管理委員会委員⻑ 与島正彦 様


2026 年6月 杉並区⻑選挙・杉並区議会議員補欠選挙におけるヘイトスピーチを許さない取組みについての要請書

杉並から差別をなくす会/一般社団法人つくろい東京ファンド/杉並性的マイノリティー連絡会/杉並トランスジェンダー差別を止める会/あなたの公-差-転/Migrante Japan/一般社団法人 反貧困ネットワーク


貴職におかれましては、日頃より杉並区における公正な選挙の実施にご尽力いただいておりますことに、深く敬意を表します。
私たちは、外国人や性的マイノリティー、生活に困難を抱える人々を含むすべての人の尊厳が尊重される社会の実現をめざして活動する市⺠団体です。


これまで杉並区では、2023年区議選挙・2025年都議選挙などで選挙公報や演説などの際にヘイトスピーチが行われ、様々な批判が出ております。また、それらヘイトスピーチについては区議会一般質問でも取り上げられ、杉並区⻑や選挙管理委員会も答弁していると存じます。
以上を踏まえ、この度、杉並区⻑選挙・杉並区議会議員補欠選挙において差別や排外主義を助⻑する⾔動を防止し、すべての区⺠の尊厳が守られる環境を確保することを目的として本要請書を提出いたします。


昨今、選挙運動という名目で外国人への差別と憎悪を助⻑するヘイトスピーチが繰り返されることが問題視されています。法務省によると、ヘイトスピーチとは「特定の国の出身者であること又はその子孫であることのみ理由に、日本社会から追い出そうとしたり危害を加えようとしたりするなどの一方的な内容の⾔動」であり、「○○人は出て行け」など特定の⺠族や国籍の人々を、合理的な理由なく、一律に排除・排斥することをあおり立てたり、差別的な意味合いで昆虫や動物に例えるなどして、特定の国や地域の出身である人を著しく見下すような内容のものなどがそれに当たります(資料1)。


2016 年5月、政府は「本邦外出身者に対する不当な差別的⾔動の解消に向けた取組の推進に関する法律(以下、ヘイトスピーチ解消法)」を制定し、「地方公共団体は、地域の実情に応じた施策を講ずるよう努める(第4条2項)」と規定しました。


また、2018年10月、東京都は「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の実現を目指す条例」を制定し、「性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない(第2章)」ヘイトスピーチ解消法に基づき「不当な差別的⾔動の解消を図る(第3章)」と規定しました。(資料2)


昨今、選挙中にヘイトスピーチが繰り広げられる状況の中、2019年3月には、法務省人権擁護局が「選挙運動、政治活動等として行われる不当な差別的⾔動の対応について」とする事務連絡を発出し、「近時、選挙運動、政治活動等に藉口して不当な差別的⾔動等が行われる場合があるとの指摘がされています。…選挙運動等に藉口した不当な差別的⾔動その他の⾔動により人権を侵犯されたとする被害申告等があった場合には、その⾔動が選挙運動等として行われていることのみをもって安易に人権侵犯性を否定することなく…人権侵犯性の有無を総合的かつ適切に判断の上、対応される」よう求めています(資料3)。


さらに、2025年12月、国連人種差別撤廃委員会(日本は1995年に「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」に加入)と移住労働者権利委員会が採択した「外国人排斥根絶のためのガイドライン」において、「締約国は、選挙プロセスの時前、最中、及び時後の外国人排斥的及び関連する⾔動を防止するための具体的な措置を実施すべきである。外国人排斥及び人種主義の防止に責任を有する当局、選挙を管理する責務を負う機関、及び国内並びに地方人権機関は、このようなイニシアティブにおいて極めて重要かつ監視する役割を果たすべき」こと。「締約国が、政党、当局及び候補者に向けて、次のような措置をとることを勧告する。…選挙運動において、外国人排斥的な⾔説を明確に非難すること、政治家及びメディアの専門家を含む公的な著名人による外国人排斥的及び人種主義的なヘイトスピーチ及び差別的⾔動と断固として闘うこと」などを求めています(資料4)。


杉並区では、「杉並区総合計画 杉並区実行計画(第2次)」(2024年1月策定)の「施策14人権を尊重する地域社会の醸成」において、「人権…が尊重される社会を実現するために…啓発事業と相談事業等を実施し、年齢、性別、国籍、人種等による差別や偏見のない多様性を認め合う意識の醸成に努めます」としたうえで、計画最終年度の目標として「差別や偏見を生む誤った情報や偏った情報がなくなり、年齢、性別、国籍、人種や様々な価値観などその多様性を認め合うなど、互いの人権を尊重し、あらゆる差別や偏見を許さないという意識がすべての区⺠に根付いています」と示しています(資料5)。


また、杉並区では、「杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例」(2023年4月施行)において、「性を理由とする差別等を受けないこと、性の多様性をめぐる個人としての尊厳が重んぜられること…を旨とし」、「性を理由として不当な差別的取扱いをすることその他の性を理由として個人の権利利益を不当に侵害する行為をしてはならない。」としています(資料6)。


以上のことから、私たちは、選挙の執行にあたり、以下のことを要請いたします。


(1)ヘイトスピーチ解消法、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例、法務省人権擁護局通知、国連外国人排斥根絶のためのガイドライン、杉並区総合計画・杉並区実行計画、杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例の趣旨を踏まえて、杉並区ウェブサイト、杉並区 SNS、区内各所の掲示板などを用いて、ヘイトスピーチなど一切の差別的⾔動は許されないものであることを周知徹底してください。


(2)(1)であげた法・条例等および関連資料を各立候補者に配布周知し、選挙運動におけるヘイトスピーチなど一切の差別的⾔動は許されないものであることを周知徹底してください。これに違反する選挙公報、選挙ポスター等への強い指導を求めます。


(3)(1)であげた法・条例等に違反する⾔動については、現場を確認し、記録をしてください。「ヘイトスピーチ解消法」違反を認知した場合には法務省、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」違反を認知した場合は東京都人権部へ通知するよう求めます。


(4)ヘイトスピーチなどの差別は、虚偽や真偽不明の情報とともに流布されます。インターネット上で虚偽や真偽不明の情報が拡散されているのを認知したときは、杉並区の関係部局、法務省などと連携して調査、協議の上、著しく虚偽である場合や根拠が不明である場合は、その結果を公表し、警告するなど公正な選挙活動がなされるよう指導してください。


(5)選挙後に、選挙におけるヘイトスピーチ防止対策がどのようになされ、どの程度有効であったかを検証するために、公正な視点を担保するべく第三者を入れた「検証とさらなる対策」を行う会議開催を求めます。


以上

資料1:法務省「ヘイトスピーチ、許さない。」
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00108.html


資料2:東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例
https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/10jinken/sesaku/sonchou/jyourei


資料3:平成31年3月12日 法務省人権擁護局調査救済課補佐官 事務連絡「選挙運動,政治活動等として行われる不当な差別的⾔動への対応について」
https://www.moj.go.jp/content/001350817.pdf


資料4:(資料3-1)2026年1月23日 国際人権NGO 反差別国際運動「差別を許さない! 衆議院選挙に向けた IMADR 声明」

https://imadr.net/statement23jan2025/


(資料3-2)2026年1月15日 国際人権NGO 反差別国際運動「人種差別撤廃委員会・移住労働者権利委員会 高まる外国人排斥を根絶するための措置を世界に促す」
https://imadr.net/cerdgr3839/


(資料3-3)2026年2月4日 国際人権NGO 反差別国際運動「外国人排斥根絶のためのガイドライン」

https://x.com/IMADR_JC/status/2018886877076709479?s=20


(資料3-4)2025年12月1日 国連人種差別の撤廃に関する委員会・すべての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する委員会「外国人排斥根絶のためのテーマ別ガイドライン合同一般的勧告39/一般的意見8」
https://imadr.net/wordpress/wp-content/uploads/2026/01/64f7b97812a9e078c50d59830aba3
1b8.pdf


資料5:「杉並区総合計画 杉並区実行計画(第2次)」

https://www.city.suginami.tokyo.jp/s001/1408.html


資料 6:杉並区「性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例」第 4 条(性を理由とする差別等の禁止)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/s017/1249.html

杉並区と区選管からの回答

杉並区選挙管理委員会事務局長、杉並区総務部総務課長、杉並区総務部広報課長の3者による連名で以下の回答をいただきました。

日頃から杉並区政にご理解とご協力をいただき、誠にありがとうございます。
「2026 年 6 月杉並区長選挙・杉並区議会議員補欠選挙におけるヘイトスピーチを許さない取組みについての要請書」につきまして、区長が拝読いたしました。その上で、以下のとおり回答させていただきます。


(1) ヘイトスピーチ解消法、東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例、法務省人権擁護局通知、国連外国人排斥根絶のためのガイドライン、杉並区総合計画・杉並区実行計画、杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例の趣旨を踏まえて、杉並区ウェブサイト、杉並区SNS、区内各所の掲示板などを用いて、ヘイトスピーチなど一切の差別的言動は許されないものであることを周知徹底してください。
(回 答)
区では、これまでも広報紙や公式ウェブサイト、SNS等を通じて、人権尊重の重要性や差別のない地域社会の実現に向けた普及啓発に取り組んでまいりました。ご指摘のとおり、ヘイトスピーチをはじめとする一切の差別的言動は許されるものではないことから、今後も引き続き、区民への周知啓発に取り組んでまいります。


(2)(1)であげた法・各例等および関連資料を各立候補者に配布周知し、選挙運動におけるヘイトスピーチなど一切の差別的言動は許されないものであることを周知徹底してください。これに違反する選挙公報、選挙ポスター等への強い指導を求めます。
(回 答)
選挙管理委員会は公職選挙法の規定に基づき、選挙の管理・執行を行う行政委員会であり、公職選挙法では、ヘイトスピーチに関する定めがないため中止を求める権限はありません。選挙管理委員会としては、立候補予定者説明会で、法務省人権擁護局、全国人権擁護委員連合会作成の「ヘイトスピーチ。許さない」のチラシ、法務省人権擁護局からの通知や、東京都の「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」チラシなどを配布し、口頭でも注意喚起を行っておりますが、杉並区長選挙・杉並区議会補欠選挙においても同様の対応をとっているところです。


(3)(1)であげた法・条例等に違反する言動については、現場を確認し、記録をしてください。「ヘイトスピーチ解消法」違反を認知した場合には法務省、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」違反を認知した場合は東京都人権部へ通知するよう求めます。
(回 答)
選挙の執行に関する事項は、独立した行政機関である選挙管理委員会が所掌しておりますので、区長部局に対しヘイトスピーチに関する情報が寄せられた場合の対応について回答いたします。
ヘイトスピーチ解消法等に違反した言動について、区が随時現場を確認することは困難ですが、区民がヘイトスピーチを見聞きした場合やヘイトスピーチを受けた場合の相談等につきましては、総務課を通じて法務省や東京都の関係機関と連携し、対応することとしています。
今後も、区に情報が寄せられた場合には、同様に対応してまいります。


(4)ヘイトスピーチなどの差別は、虚偽や真偽不明の情報とともに流布されます。インターネット上で虚偽や真偽不明の情報が拡散されているのを認知したときは、杉並区の関係部局、法務省などと連携して調査、協議の上、著しく虚偽である場合や根拠が不明である場合は、その結果を公表し、警告するなど公正な選挙活動がなされるよう指導してください。
(回 答)
公職選挙法は、発信内容の善悪を直接取り締まる法律ではないことから、一義的にはネットユーザーの管理主体であるプラットフォーム事業者等において関連法律に基づき適切に対処されるべきものと考えます。選挙管理委員会では、警告などを行う権限はありませんが、所轄の警察署と情報を密にし、必要に応じて情報提供など行ってまいります。


(5)選挙後に、選挙におけるヘイトスピーチ防止対策がどのようになされ、どの程度有効であったかを検証するために、公正な視点を担保するべく第三者を入れた「検証とさらなる対策」を行う会議開催を求めます。
(回 答)
選挙管理委員会には、ヘイトスピーチ対応などの人権関連の所掌業務を行う組織ではないため、要請書のような会議体の設置は考えておりません。