なぜ路上生活やネットカフェ生活から抜け出せないの?

増え続ける「路上一歩手前」のひとびと

「行政がホームレス対策を進めているはずなのに、なぜまだ路上生活をしている人がたくさんいるの?」
「ネットカフェなどで暮らすワーキングプアはなぜそこから抜け出せないの?」

皆さんはそんな疑問をお持ちになったことはないでしょうか。
たしかに近年、生活保護の適用が進み、路上生活をする人の数は減ってきました。しかし、路上には依然として多くの人が残されています。
また、仕事を持ちながらも、ネットカフェや24時間営業のファストフード店など「路上一歩手前」の状態にある人は増え続けています。

なぜ路上生活やネットカフェ生活から抜け出せないのか?
その背景には「すぐに入居できる個室のシェルターがない」という問題があると私たちは考えています。

すぐに入居できる個室のシェルターがない

東京都内には生活困窮者を対象とした施設が百数十軒も存在しますが、個室の施設は数えるほどしかありません。相部屋形式の施設の中にはプライバシーが保たれず、居住環境や衛生面で問題のある施設も少なくなく、これらの施設は「貧困ビジネス」として批判を浴びています。
また、行政による支援策を利用するためには、平日に役所の窓口で手続きをしないといけないため、仕事を休むと収入が減ってしまうビッグイシュー販売者や非正規労働者はなかなか利用できない実態があります。

そのため、施設はたくさんあるものの、「当事者のニーズに応じた住まいがない」という問題が生じています。

例えば、「知的障がいや精神疾患などにより集団生活になじめない人が安心して暮らせる個室の部屋がない」、「ビッグイシュー販売者や非正規労働者がすぐに入れる部屋がない」、「土日や年末年始など閉庁期間中に緊急で入れる場所がない」、という状況が起こっているのです。

「すぐに入居できる個室のシェルターがない」という問題は、「東京のセーフティネットの穴」であり、そのことがホームレス問題の解決を妨げているのです。

ビルのオーナーから居室提供の申し出が!

そんな中、中野区内のビルを所有しているオーナーから「マンションとして使われていたフロアが空いているので、生活困窮者のために使ってほしい」という申し出がありました。
そこで、オーナーの協力により改装をおこない、念願の個室のシェルターを作れる場所を確保することができました。
シェルター開設に必要な費用は、クラウドファンディングなど、多くの市民から集まった資金でまかないました。
そして、2014年7月、ついに個室シェルター「つくろいハウス」を開設することができたのです。

路上・ネットカフェからシェルター、そしてアパートへ

現在、「つくろいハウス」では、東京都内各地で生活困窮者を支援する団体からの紹介で、路上生活やネットカフェ生活をしていた人たちを受け入れ、安定した住まいに移行できるまでの支援をおこなっています。
シェルター入居後、ご本人の生活状況や希望に応じて、スタッフが生活保護の申請支援をおこなうほか、知的障がいや精神疾患、身体疾患のある人には、ボランティア医師や医療機関の協力を得ながら、適切な医療を受けられるための支援もしています。また、シェルター退去後の住まいを確保するために、アパート探しなどの支援も実施しています。

また、働いて収入を得ている人がアパートに移る際、入居のための初期費用(敷金・礼金など)が大きなハードルになっていることを踏まえ、初期費用ゼロで入居できる借り上げアパートの整備も進めています。

ぜひ、皆様のご協力をお願いいたします。

つくろい東京ファンドの住宅支援事業

2017年11月現在、中野区、新宿区、墨田区、豊島区の4つの区で、計23部屋を確保し、住まいのない生活困窮者を受け入れるシェルターや借り上げアパート、東京の高家賃に悩む若者向けのシェアハウスの運営を行なっています。

中野区:つくろいハウス

中野区内のビルのワンフロアをお借りした個室シェルター(7部屋)です。
東京都内のさまざまな生活困窮者支援団体と連携をして、住まいのない生活困窮者を受け入れています。
「つくろいハウス」では、入居者に対して生活相談や同行支援(福祉事務所、医療機関等)、アパートの部屋探しの支援等を行い、アパートに移った後も希望者には継続して支援をしています。
また、近隣に借り上げアパートを2部屋確保しています。

新宿区:ふらっとハウス

新宿区内の小さな一軒家を借り上げ、ホームレスの人たちのためのシェルター(2部屋)として整備しました。
NPO法人ビッグイシュー基金と連携をして運営しています。

墨田区:ハナミズキハウス

ファミリー向けの空き家物件を活用して、東京の高家賃に悩む若者向けのシェアハウス(3部屋)を運営しています。
また、ハナミズキハウスでは月2回、「ことといこども食堂」を開催しています。全国でも珍しい「空き家を活用したシェアハウスで開催されるこども食堂」です。

豊島区:ちはやハウス・しいなハウス等

2016年、新たに豊島区内に個室シェルター「ちはやハウス」(2部屋)、「しいなハウス」(4部屋)を開設しました。その後、他のアパートの居室も確保し、2017年11月現在、池袋地域で計9室を借り上げています。これらの住宅は、池袋地域でホームレス支援を行なっている諸団体と連携して運営しています。

池袋では、ホームレス支援NPOのTENOHASIや、国際NGOの「世界の医療団」が中心となり、「東京プロジェクト(ホームレス状態の人々の精神と生活向上プロジェクト)」が行なわれてきました。

このプロジェクトは、ホームレスの人の中に知的障害や精神疾患を抱える人の割合が高く、その人たちに支援の手が届いていないことを踏まえ、障害や疾患を持つ人々が野宿から脱却し、地域で安定した生活をおくれるように医療・保健・福祉などの総合的なサポート体制を構築することを目的としています。

北海道・浦河の「べてるの家」の流れを汲む「べてぶくろ」や、「精神科訪問看護ステーションKAZOC」もこのプロジェクトに参加し、障害や疾患を抱える元ホームレスの人たちの地域生活を支えるネットワークが育まれてきました。

2016年春から、つくろい東京ファンドも正式にこのプロジェクトに加えていただき、プロジェクト名も「ハウジングファースト東京プロジェクト」と改称することになりました。

今後、豊島区及び中野区で徐々に部屋数を増やし、「ハウジングファースト」型の支援を実践していく予定です。