参議院法務委員会で入管法改定法案(政府案)の採決が迫っています。

私たち「つくろい東京ファンド」は、反貧困ネットワークや中野共立病院「なんでも街頭相談会」実行委員会などとともに「#入管法改悪反対」の声をあげてきました。

6月5日夜の国会前で開催された「入管法改悪の強行採決に反対する大集会」には5500人が集まり、メディアでも大きく報道されました。

入管法改正に「ノー」 国会前でデモ | TBS NEWS DIG

「仲間を殺すな」入管法改正案の採決を前に国会前で廃案求めてデモ:東京新聞 TOKYO Web

入管法改正案「強行採決、絶対反対」 国会前で5500人デモ | 毎日新聞

国会前の大集会では、「つくろい東京ファンド」スタッフの小林美穂子もスピーチをしました(下記動画の2:01:30頃~)。

入管法改悪の強行採決に反対する大集会@国会正門前 (6/5)#ポリタスTV

以下に小林のスピーチ原稿を掲載します。ぜひご一読いただき、難民の命を脅かす法改悪に反対との声をあげていただけるとありがたいです。

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中野区で生活困窮者の支援をしている「つくろい東京ファンド」という団体から来ました、小林美穂子と申します。
私達は「住まいは人権」を旗印に、住まいをはじめとした、生活に関わるさまざまな支援をしている団体なのですが、コロナ禍で活動内容はガラリと変わりました。

コロナ禍はそれまで可視化されていなかった二つのパンドラの箱を開けました。
一つはネットカフェや24時間営業のファストフード店で夜を過ごしながら、非正規就労でなんとか生き抜いてきた若者たちの存在。
もう一つが仮放免者でした。
それまで私は「仮放免」というシステムがあることも、「仮放免者」という人達がいることも知らずに生きてきました。

その頃、私はネットカフェ生活者たちを支援していて、連日あちこちの区役所に生活保護の申請同行に行っていました。

生活保護の窓口はコロナ前とあまり変わらず、それほど混雑していなかったのに比べ、生活保護制度ではない「困窮者支援」の窓口は人でごった返していました。カウンター周辺は足の踏み場もないほどで、溢れた人たちは階段で列を作っていました。その中に、外国人の姿も目立つようになり、その時に見かけたアフリカ系の男性を今でも思い出します。
男性は階段の壁にもたれて、とても静かに涙を流していました。
この時、私には何もできませんでした。そんな気持ちの余裕もなかったように思います。

それからです。
私達の団体にも外国人の相談が殺到するようになったのは。
その多くは仮放免者でした。
入管施設から出られたものの、働いてはいけない、医療保険に加入もできない、許可なしに県境を移動することすら許されない、生活保護をはじめとする社会保障へのアクセスは皆無。
どう考えたって、そんなの、困窮するに決まっているではありませんか。

在留資格が切れても帰れないのは、帰れないわけがあるからです。
在留資格を持たないというそれだけの理由で外国人を「犯罪者予備軍」扱いしたり、「犯罪者」と断定したりしているこの国の一部の人達を私はとても恥ずかしく、また申し訳なく思います。
「どこの国でも同じだろ」という人もいます。そうでしょうか。
コロナ前、海外で生活困窮してしまい、家も所持金も失ってホームレス化してしまった日本人の支援に関わったことが複数回あります。
在留資格を失って長い年月が過ぎていました。
その間、彼らを助けたのは、地元の人達です。たくさんの市民が、彼らを家族のように家に迎え入れ、帰国を支援し、私達につなげました。

国会前集会でスピーチをする小林美穂子。撮影:高木ちえこさん

今、つくろい東京ファンドのシェルターでは、13世帯の難民申請中や仮放免中の方々が暮らしています。困っている人に日本人も外国人もないからです。みな、故郷に戻れない人達です。
命からがら日本にたどり着き、なんど難民申請をしても認定はされず、自由を制限され、兵糧攻めに遭い、入管施設では職員による暴力も経験し、心身ともに破壊されています。
「日本に本当の難民はいない」
「難民は飛行機に乗ってこない」
「国益なくして人権なし」
こんな言葉を為政者たちが発するたび、また、SNSで心無い誹謗中傷を目にするたびに、現場で見る事実とのあまりの乖離に言葉を失います。

私達日本人は、自分とは「異なる」と思う人たちをなぜ隣人として迎えることができないのでしょう。なぜ、地域の一員として共に生きることができないのでしょう。

ある仮放免の家族に勉強机と本棚を買い、一緒に組み立てました。
図面を見ながら、ああでもないこうでもないと一緒に組み立てをしていたのですが、完成に近づくと子どもたちのテンションは爆上がりしました。
「すごい、すごい、これ、うちの勉強机。人生初じゃね?すごくない?ドアを開けたらこれがあるんだよ。自分の勉強机があるんだよ。夢みたい!」
そうはしゃいだあとで、すっと真顔になり、「どうしよう、夢だったら。目が覚めたらなくなっていたら」と、つぶやきました。
この子たちも、他の仮放免者たちもみんな、「明日目が覚めたら収監されるかもしれない。強制送還されるかもしれない」そんな不安を抱えながら生きています。

今、審議されている入管法が通ってしまえば、この仲の良い家族はバラバラにされる可能性が出てきます。子どもたちは日本で育っており、母国語は日本語です。母親の生まれた国に帰されても生きてはいけません。
そして、仮放免のままでは、人生初の自分の勉強机で、彼らがどんなに一生懸命勉強をしても、卒業したあとに就職することができません。
どんなに頑張っても、どんなに優秀でも、未来を描くこともできない。
ティーンエイジャーになって初めて自分の勉強机を持ち、その机さえ「夢だったら…」と言わせてしまうこの国が私はとてもイヤです。変わって欲しいです。

声を上げない、上げられない人達の人権を踏みにじる国は、声を上げない、上げられない立場にいる日本人の人権も平気で踏みにじる、そのことを私は生活困窮者支援の世界でずっと見てきました。
他人事ではないのです。
あなたもいつか線引きされ、「いなくていい存在」と断ぜられ、排除される日が来るかもしれません。

イラスト・撮影:高木ちえこさん

せめて国は、国際基準を守って難民審査をしてください。
難民条約に加盟しながら、国際基準とはかけ離れた独自ルールで審査をしないでください。
仮放免者に労働の許可と保険の加入をさせてください。
非人道の極みである無期限の収容や暴力をやめてください。
彼らが人間であることを、人権に「資格」は必要ないことを学んでください
排除でなく、管理でもなく、共生の道を検討してください

私は入管法改悪に反対します。

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今できるアクションについては、NPO法人移住連のツイートをご参考にしてください。