生活困窮者支援の現場において、多くの仮放免状態にある者から「家賃が払えない」「住居を失った」「路上生活をしている」といった相談が相次いでいます。その一方で、こうした深刻な実態はこれまで可視化されていませんでした。

そこで、北関東医療相談会、ビッグイシュー基金、つくろい東京ファンドの3団体は共同で「仮放免者と住居」の実態を解明するための調査を行いました。

「仮放免者住居調査」は、2023年8月~12月、各外国人支援団体が支援を行っている仮放免者、仮放免当事者から紹介のあった仮放免者に調査票(550件)に郵送する形で実施しました。その結果、146件の回答(33の国と民族)をいただきました。

2022年12月末現在の仮放免者は4671人(収容令書・退去強制令書によるもの)なので、調査に回答した仮放免者は仮放免者全体の3.1%にあたります。。

■調査結果のポイント

調査結果をまとめた報告書の全文は、以下でダウンロードできます。

『仮放免者住居調査報告書』PDF

結果の概要は下記の通りです。

1.86%が「働ける年齢層」、85%が「難民認定申請者」、31%が「未成年の子ども」あり世帯

・調査回答者の86%が20~50代の働ける年齢層。
・調査回答者のうち、帰化要件(5年)以上の滞在年数の者は85%、永住許可要件(10年)以上の者は66%、20年以上の者は39%、30年以上の者は23%となっており、他の調査と比較して滞在年数が長い者が多い。
・調査回答者の85%が難民認定申請中。
・調査回答者の31%が未成年の有子世帯。

2.91%が「家賃に苦しむ」、46%が「家賃滞納」、40%が「電気ガス水道滞納」

・家賃の負担感をとても苦しい・苦しいと答えた者は91%。国交省調査の1.7倍。電気ガス水道の負担感をとても苦しい・苦しいと答えた者は86%。
・家賃滞納をしている者は46%。公益財団法人調査の57.5倍。電気ガス水道を滞納している者は40%。研究所調査の23.5~26.7倍。
・過去に家賃滞納経験のある者は66%。過去に電気ガス水道の滞納経験のある者は63%。

3.家賃払えず、家賃や住居の援助を受ける不安定居住の仮放免者

・住居を確保することがとても大変・大変と答えた者は70%。
・調査回答者の多くが、家賃を支払う際に親戚親族・友人からもらう、借金をする、支援者・支援団体からもらう。
・調査回答者の53%が本人や家族以外の者が所有する住居で暮らす。

4.5人に1人が「路上生活の経験」、5人に1人が経済的な理由で「住居を失った経験」

・住居を維持できないかもしれない・すでに家を失っている・わからないと答えた者は74%。現在の住居に安心して暮らし続けられないと答えた者は51%。
・過去に家賃を支払えずに住居を失った経験がある者は21%。過去に路上生活をした経験がある者は22%。

■要望・提言

「仮放免者住居調査」で深刻な実態がデータで明らかになったことを踏まえ、12月19日、北関東医療相談会、ビッグイシュー基金、つくろい東京ファンドの3団体は多くの賛同団体とともに国土交通省、東京都に対して、仮放免者の住宅確保策の実施を求める要望書を提出しました。

国土交通省宛て「要望書」PDF

東京都宛て「要望書」PDF


要望項目は下記の4点です。

1.在留資格の有無や条件に拘わらず、外国人が確実に居住支援法人に繋がれるよう周知徹底すること

2.公営住宅の入居者募集に際し、在留資格の有無や在留期間等の条件によって応募の受付と抽選から除外されないよう、措置を講じること

3.建て替え計画等により空室がある公営住宅の空室が活用されるよう、支援団体の利用を認める措置を講じること

4.非正規滞在外国人を含む外国人に対しウクライナ避難民並みの居住支援をすること

※北関東医療相談会「仮放免者生活実態調査」での提言(就労を認めること、国民健康保険など医療保険の加入を認めること、無料低額診療事業を行う医療機関への支援・未払補填事業の整備拡充を行うこと、生活保護法を適用すること)を踏まえたうえで、住居に焦点を当てた提言となっています。

■当事者の切実な声

 調査の自由記述欄には、仮放免の当事者から深刻な状況を訴えてる声が多数寄せられました。その中から一部をご紹介します。

・私は住民票がないため家を借りることもできない。医療費は全額負担となっており大変です(50代男性)

・子どもの学校に近くて家賃は安い家があればよいといいけど、在留資格ないから借りることができません。いつもありがとうございます(30代女性)

・仮放免中なので仕事ができません。仕事ができないのでお金もありません。今はお義母さんの給料だけで生活をしていて本当に困っています。子どもたちのためにも早く仕事ができるようになりたいです(40代女性)

・前まで〇〇(注:本国)からお母さんお金をもらったんです。母は亡くなったから困ることになりました。家賃は7月から払っていないです。ガスは4月から払っていないです。電気は1月から払っていないです。水は7月から払っていないです。もうすぐ寒いだからどうするかな…。ちょっとわからないんです。本当困りました(40代男性)

・シェルターだから出ないといけない。でも、仮放免だから働けない。家借りるできない。どうしますか(30代男性)

・家賃、電気、ガス、医療費、食料を助けてください。お願いします(30代男性)

・家賃、電気、水、ガス、医療費を助けてください。お願いします(60代男性)

・家賃2月残り分あります。あと、電気代1月とガス2月、水3月分もあります。食べ物も買うは大変です。あと、病院のお金いっぱい残っています。私の病院と子どもの病院と夫の病院です(50代女性)

・住民票あればいいとこ見つかるはず。仮放免者に家を貸さないこと。仮放免者に住居を提供するネットワークあるといいです。そのような組織を作ってもらいたいです(50代男性)

・自分の名義で家が借りられたらと思う。仮放免の生活で一番困っているのは働けないこと、保険がないこと、移動ができないことです。こうした人として当たり前のことが認められていないことが一番困ります(50代男性)

・働ければこんなことにならない。仮放免でも家を借りられるように(50代男性)

・一番困っていることが保険がないこと。病院に行けないのはすごく困ってます。生きるにしてもお金がものすごく高い。払えません。お金入るのは仕事しないといけない。でも、今の状態は仕事ができない状態。本当に苦しいです。いつまでもこんなに苦しい生活になりますか?わかならない(40代女性)

・家が必要です。現在、私と二人の子供と友達の家に住んでいますが大変です。住居と子供の教育のことを助けてください(30代女性)

・現在はちゃんとした住む場所はありません。サポートグループが提供してくれたところに住んでいます。安定した場所ではありません。いい場所を見つけるまでここにいるだけです。(30代男性)

・家賃を払うのに支援が必要です。払えないのが恥ずかしく、精神的にも限界です。支援をしていただければ本当に感謝します。今の状態だと本当に払うのが難しいです(30代男性)

・生活費と家賃を払うのが本当に困難です。それの支援をいただければ、幸いです(50代女性)

住まい確保の取り組みにご協力ください

つくろい東京ファンドでは、難民・仮放免者の住まいを支える「りんじんハウス」プロジェクト(シェルター提供及び家賃支援)を進めています。この1年で、20の国・地域にルーツを持つ約60世帯の住まい確保・維持を支援できました。

プロジェクトの詳細は下記の寄付ページをご覧ください(画像をクリックしてください)。

引き続き、ホームレス化を防ぐための支援を民間レベルで進めるとともに、国・自治体に対して公的な住宅支援の実施を求めていきます。ご注目をお願いいたします。