昨年秋以降、群馬県桐生市の生活保護行政において、保護費の満額不支給や申請権の侵害等、様々な違法行為・人権侵害が長年にわたり行われてきたことが明らかになりました。

生活保護問題に取り組む全国の研究者、法律家、支援団体関係者は今年3月、「桐生市生活保護違法事件全国調査団」(団長:井上英夫 金沢大学名誉教授)を結成し、問題の徹底検証、再発防止を求めて桐生市、群馬県等への申し入れ・交渉をおこなってきました。

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「調査団」活動の結果、明らかになった課題の一つに、生活保護利用者の家計が民間の3団体によって管理されているという問題があります。民間団体に金銭管理をされている保護世帯は、2022(R4)年度において計66件(内訳:社会福祉協議会11件、日本福祉サポート26件、ほほえみの会29件)もあり、同年度の被保護世帯数(490世帯)の実に13.6%に及びます。

金銭管理契約は市が紹介した各団体が本人と任意の契約をするという形をとっていますが、「調査団」関係者のもとには、意に反して口座を管理されているが、桐生市や民間団体からの報復が怖くて金銭管理契約の解約や通帳の返却を求めることができないという悲痛な相談が寄せられています。

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この問題を解決するため、「調査団」は5月31日までに厚生労働省、群馬県、桐生市、全社協、群馬県社協に対して、緊急の要望書を提出しました。

「桐生市の民間3団体に金銭管理をされている被保護者の真意の確認と被害の回復を求める緊急要望書」PDF


6月14日(金)には、厚生労働省社会・援護局保護課、桐生市、群馬県に対して申し入れをおこないます。同日(金)15時~には厚生労働記者会にて記者会見もおこないます。ぜひご注目ください。

また、桐生市では今年3月より「桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会」が開催されていますが、その検証対象や運営方法(傍聴や取材)に看過できない問題が発生しています。

5月24日の第三者委員会第2回会合の取材に行った小林美穂子の報告もぜひご一読ください。

「公金だという認識はなかった」桐生市の生活保護問題を検証する第三者委員会に行ってきた(小林美穂子)

そこで、「調査団」は6月10日、桐生市及び第三者委員会に改善を求める要望書を提出。要望書では検証対象を制限しないこと、市民やメディアに開かれた運営をすることを求めています。

「桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会」による検証対象及び運営方法に関する要望書PDF

桐生市問題の徹底解明と抜本的な改善を求める動きに、引き続き、ご注目・ご支援をお願いいたします。

6月5日に創刊された月刊『地平』7月号に小林美穂子が「桐生市事件 生活保護が半減した市で何が起きていたか」という記事を寄稿しています。ぜひご一読ください。

月刊『地平』創刊号(7月号)