昨年7月、杉並区の荻窪福祉事務所に生活保護を申請した50代の男性(Aさん)が、親族への扶養照会を拒否したいという意向を示す「申出書」を提出しようとしたところ、文書の受け取りを拒否され、後日、80代の両親に扶養照会を強行されてしまう、という問題が発生しました。

今年2月4日、つくろい東京ファンドと生活保護問題対策全国会議は、杉並区に「抗議・要請書」を提出し、Aさんを交えた話し合いの場をつくることを求めてきましたが、区に拒否され続けてきました。

これまでの経緯は下記の関連記事をご覧ください。

「申出書」の受け取りを拒否し扶養照会を強行した杉並区に抗議・申入れ。

「親族からの援助は生活保護の要件でも前提でもない」~杉並区に当たり前のことを認めさせるまでの攻防の記録

区民との対話を拒み続ける杉並区の姿勢には驚くばかりです。私たち2団体は、5月9日付けで「再度の抗議・要請書」を提出しました。ぜひご一読ください。

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2022年5月9日

杉並区長 田中良 殿
杉並区保健福祉部部長 殿
杉並区保健福祉部杉並福祉事務所荻窪事務所所長 殿

一般社団法人つくろい東京ファンド
生活保護問題対策全国会議

再度の抗議・要請書

 2021年7月、貴区の杉並福祉事務所荻窪事務所を訪れ、生活保護を申請した50代の男性(Aさんとします)が、親族への扶養照会を拒否する意向を示した申出書を持参し、口頭でも80代の両親に照会をしないでほしいと職員に訴えたにもかかわらず、職員が申出書の受け取りを拒否し、後日、扶養照会を強行されるという事案(以下、「本事案」と略す)が発生しました。


 私たち2団体は、Aさんに対する貴区の対応が区民の人権と尊厳を著しく損なうものであり、扶養照会に関する厚生労働省や東京都の運用方針にも反するものであるとして、本年2月4日、Aさんや複数の杉並区区議会議員とともに荻窪事務所の窓口を訪れ、「抗議・要請書」を提出。Aさんを交えた話し合いの場を本年2月末までに設定し、Aさんに直接、謝罪をすること等を求めました。


 私たちは本事案の経緯を知る荻窪事務所の所長との面談を要望しましたが、貴区は「まん延防止等重点措置」が発出されていることを口実に話し合いの場を持つことは難しいと回答してきました。しかし、同措置の期間が終了した3月21日以降も動きがなかったため、Aさんから依頼を受けた樋脇岳区議が保健福祉部長を通じて所長との面談の設定を要望したところ、4月27日、所長の部下から樋脇区議に「『会いません』との伝言を承っています」との返答が伝えられました。

 私たちはこれまで生活保護行政の改善を求めて、さまざまな地方自治体に申し入れをおこなってきましたが、担当者との面談自体を拒否されたのは極めて異例であり、貴区の対応は極めて不誠実です。
 職員により不当な対応をされた区民が有権者の代表である区議を通して、責任者である管理職との話し合いを求めているにもかかわらず、対話を拒否し続けるのは民主主義を否定する行為に他なりません。


 貴区は本事案についての区議会での質疑で、Aさんへの対応は適切であったと答弁していますが、本当にそのように考えているのなら、Aさんご本人と面談をすることに何の問題もないはずです。Aさんと会って事実関係を確認することで、区議会での説明と矛盾が生じ、不都合な事実を認めざるをえなくなることを怖れているのでしょうか。

 私たちは地方自治体としてあるまじき貴区の対応に厳重に抗議するとともに、改めて、本事案に関して責任を持つ貴区の管理職が私たち及びAさんとの面談の機会を設定することを強く求めます。

 なお、本年2月4日に「抗議・要請書」を提出した際、私たちは貴区公式サイトでの生活保護制度の紹介ページにおいて、親族による扶養が「前提」「要件」であるとの誤った記載があることを指摘する資料も提出しました。


 4月1日に貴区が問題のページの記載を変更し、生活保護と親族扶養の関係について「前提」「要件」との文言を削除したのは、私たちの指摘を受け止めたものだと推察されますが、これまでの貴区の扶養照会の運用が誤った制度認識に基づき、違法に運用されていたのではないか、という疑念は深まるばかりです。貴区の扶養照会の運用について検証する第三者委員会の設置も要請します。