群馬県桐生市の生活保護行政において違法対応・人権侵害が常態化していた問題で、桐生市生活保護違法事件全国調査団は6月5日、第三者委員会の報告書に関する見解と要望「桐生市生活保護行政が真に生まれ変わるために」を発表。桐生市と厚生労働省に対して、それぞれ新たな要望書を提出しました。

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「見解と要望」及び要望書の内容は各PDFをご覧ください。

桐生市生活保護行政が真に生まれ変わるために~第三者委員会報告書についての見解と要望PDF

「見解と要望」に関する資料PDF

桐生市市長あて「桐生市生活保護行政が真に生まれ変わるための要望書」PDF

厚生労働大臣あて「生活保護行政を真に生まれ変わらせるため、監査を根本的に見直すことを求める要望書」PDF

申入れは各メディアでも報道されました。


職員個人の刑事責任調査を 生活保護問題で全国調査団が桐生市に要望 引き続き監視の方針示す:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/409887

退職者の処分や被害者救済を求め要望書 群馬・桐生市の生活保護問題で全国調査団が市に提出 | 上毛新聞電子版
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/691751

行政が“組織ぐるみ”で「生活保護バッシング」…桐生市による「違法減額・分割」など第三者委が認定 全国調査団が是正求める -弁護士JPニュース
https://www.ben54.jp/news/2343

以下は厚生労働省への申入れに参加した小林美穂子(つくろい東京ファンドスタッフ)による報告です。

2025年6月5日、桐生市生活保護違法事件全国調査団(以下、全国調査団)は、桐生市と厚生労働省(以下、厚労省)に対して要望書を提出しました。
厚労省は3月に発出した社会・援護局関係主管課長会議の通知において、自治体名は特記していないものの、明らかに桐生市と分かる事例を挙げて厳重注意をした上で、監査の重点事項にはじめて「要保護者に対する権利侵害の防止について」を明記しました。

令和6年度 社会・援護局関係主管課長会議資料


保護課資料PDF

保護課自立推進・指導監査室資料PDF

これまで不正受給など「濫給防止」に偏っていた監査方法が、ようやく水際対策により必要な人が制度を受けられない「漏給防止」をしっかり監査し、指導するような通知になったと私たち調査団は喜びました。

ところが、2月に厚労省が桐生市に対して行った監査の結果が4月に公表されると、その内容に冷や水を浴びせられたような気持ちになりました。監査結果の報告書は、とても課長会議の通知が生きてるとは思えぬ内容であり、被保護者世帯を厳しくチェックしている反面、これまで明らかになっている市福祉事務所側の問題をほとんど監査していません。

桐生市:令和6年度厚生労働省生活保護法施行事務監査の結果

桐生市が相談者や利用者に対して人権侵害や権利侵害をすることが習慣化してしまっていたように、これまで長い間濫給防止ばかりをチェックしてきた国も、その習慣から脱却するのが難しいのでしょうか。

今回の厚労省宛の要望書には、(1)監査内容の重点を漏給防止に置く(2)桐生市が通院交通費を支給しているかのチェック(3)不動産の保有容認基準が守られているかの確認等、加えて、桐生市の第三者委員会が提案した改善事項について、確実に実施されているのかを、群馬県を通して報告を求めること、全国の自治体で保護率が激減している自治体を抽出して特別監査を実施することを要望しています。

これらの要望に対し、厚労省側は、「(桐生市の監査報告書が)濫給防止中心になっていると捉えられるかもしれないが、実際は漏給に対しても指導しているし、これからも引き続き指導していく。」と答え、調査団側は「厚労省が本気で変えていくというメッセージを各自治体に出して欲しい。そのために保護率半減している自治体が権利侵害をしていないか調べてほしい」と切実に訴えました。実際、過去10年間で桐生市以上に生活保護率を下げている自治体は、桐生市の他に10自治体あります。
 
現在の状況について、厚労省担当者は「2月に行った監査で桐生市に指摘した点のうち、直っていない点を是正するように県を通じて市に申し入れている最中で、6月上旬、6月中くらいに回答が上がって来る予定である。それを踏まえて、厚労省が桐生市に対する確認監査を行う予定。我々の指摘した是正改善の結果や、市長が挙げていた再発防止策の進捗が確認監査の中で聞けると思う。国と県とで協力して桐生市だけでなく、監査を続けていく。」と答えました。

調査団は重ねて「監査内容を濫給防止から漏給防止へ」と要望。
これまで監査の重点が濫給防止にばかり置かれてきたことが、桐生市のような福祉行政を育ててしまった、その責任を重く感じ、生活保護制度を本来あるべき制度に戻してほしいし、疑わしい自治体を徹底調査してほしいと強く願います。

厚労省の担当者は、「今回の課長会議で実施要項を改正し、権利擁護を含めた項目を追加したが、それで終わりということではない。県や指定都市の職員は、我々が出したメッセージをもとに実施方針や事業計画を作る。それをもとに福祉事務所の監査を毎年するという建付けになっているので、少し時間はかかるが是正されるだろう」と見解を述べ、懇談の終盤で、「『桐生市事件』、読みました」と言い、「いやあ、あれはもう…」と首を振りました。

読んでいただけたのなら、桐生市でどれだけの人権侵害、権利侵害が長年に渡り行われて来て放置されてきたか、その責任を重く重く感じていただき、国と県で本気で、敏速に改革に乗り出してほしいと思います。(小林美穂子)